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2022年09月03日

迷走プルトニウム 仏のMOX燃料工場で相次ぐ不良品 原発で異常核反応も 2022/9/3 16:00

迷走プルトニウム 仏のMOX燃料工場で相次ぐ不良品 原発で異常核反応も 2022/9/3 16:00

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船からクレーンで陸揚げされるMOX燃料の入った輸送容器。左端は関西電力高浜原発4号機の原子炉格納容器=福井県高浜町の高浜原発で2021年11月17日午後1時13分、大島秀利撮影

 プルトニウムを原発で燃やすプルサーマル発電用の燃料を製造するフランス南東部の「メロックス工場」で、不良品が相次いで見つかっている。さらにプルサーマルを実施している原発で部分的に核反応が異常に増える現象も起き、二つの事態の複合は「異常事象」とされたことが、フランス原子力安全規制当局(ASN)などの資料で分かった。いったい何が起きているのだろうか。

 同工場は日本向けの燃料も製造している。日本向けでは今のところ問題は見つかっていないというが、製造は遅れており、今後の製品納入が見通せない状況に陥っている。

 プルトニウムは、原発の使用済み核燃料を化学処理(再処理)して取り出す。燃料にするには、プルサーマルを実施している加圧水型原発の場合ウランと混ぜて直径約8ミリの円筒形の粒「ペレット」に焼き固める。これをウラン・プルトニウム混合酸化物燃料(MOX燃料)と呼ぶ。プルサーマルを実施している加圧水型原発の場合、ペレット約320個を燃料棒の中に積み重ね、さらに燃料棒約260本を束ねて燃料集合体(高さ約4・1メートル)とする。

難易度の高い均一化

 プルトニウムとウランを均一に混ぜるのは難しい。プルトニウムの密度が高い部分があると、原発の運転中に部分的に高温になり、燃料を覆う管が変質してもろくなるおそれがあると指摘されている。ASNの資料などによると、メロックス工場で製造した燃料ペレットに、プルトニウムの密度の高い塊「プルトニウムスポット」が見つかった。

 一方、MOXの燃料棒の上下の端付近で、核反応を示す中性子の量が想定以上に増えてしまう現象が、プルサーマルを実施しているフランスの原発で確認された。

 ASNによると、このプルトニウムの塊の問題と、部分的に核反応が上昇する二つの異常が重なった場合「事故の状況によっては燃料の健全性に疑問を投げかける事態になる」と予測された。

 NPO原子力資料情報室(東京都中野区)で工学担当の上沢千尋さん(56)によると、懸念されるのは燃料が溶けたり、燃料を覆う管が破損したりする事態。「プルトニウムを燃料に使うと、核反応が局所的に上昇する可能性が指摘されてきた。それが顕在化した」と上沢さんはみている。

仏電力「異常事象」と判断

 原発を運転するフランス電力(EDF)が、初めて同種の事態を公表したのは2017年だった。この時は国際原子力・放射線事象評価尺…

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2022年03月27日

老朽原発・美浜3号機運転差し止め仮処分 大阪地裁が争点整理に積極姿勢示す 2022年3月27日

老朽原発・美浜3号機運転差し止め仮処分 大阪地裁が争点整理に積極姿勢示す 2022年3月27日10:00

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(大阪地裁前で入廷行進する申し立て人ら)

 3月7日、老朽美浜原発仮処分第3回審尋期日(非公開)が大阪地裁で開かれた。

 ウクライナへのロシアの侵攻、チェルノブイリ原発、ザポリージャ原発等の施設のロシア軍掌握が報じられるなか、期日前の前段集会では、福井県在住で申立人共同代表の石津優さんは「原発の抱える潜在的な危険が、自然災害や今回の戦争で表に出てくることになる。戦争になったら避難はあり得ないし、福井県若狭湾には敦賀から50キロもないところに15基もある。原発はあってはならない」と強く訴えた。

 期日後の記者会見を兼ねた報告集会にて、原子力規制委員会の地震動の基準改悪について、脱原発弁護団全国連絡会は「『ばらつき条項』を削除する基準地震動等審査ガイド改悪に反対し、強く抗議する」声明を発表した。2020年12月の大阪地裁判決は、地震動審査ガイド「ばらつき条項」を適用していないとして、関西電力大飯発電所3、4号機設置変更許可処分を取り消した。規制委の今回の改正案の中心は、この「ばらつき条項」を削除するものである。

 2017年12月13日広島高裁決定で、火山ガイドの不合理性を指摘されると、「巨大噴火に関する基本的な考え方」を出して火山ガイド自体を改悪した。今回も、裁判所から地震ガイドの不合理性を指摘されると、地震ガイド自体を改悪するという、規制のための組織として失格であり、まったく中立ではなく、3・11福島第一原発事故を招いた「規制の虜」は今も続いている。

 共同代表の河合弘之弁護士は、負けたからとルールを変えるさまは、たとえば、相撲で土俵そのものを変えることで許されないと断じた。このばらつき条項は本件の争点の一つでもある。

 声明の発表後、弁護団長の井戸謙一弁護士より、おおよそ以下の報告があった。

 ──申立人側としては、この日で審尋期日を終え、反論書面の提出期限を決めて、審理終結の方針であった。しかし、思いかけず、裁判所から、争点項目案(本件の争点について、裁判所がまとめたメモ)が提出された。当事者双方が落ちている争点がないかなど検討し、争点の確定後、争点ごとに裏付ける証拠をそれぞれ示すことになった。これは裁判所の姿勢としては正しいことで、これをしないと、争点だと思っていることを裁判所の決定で落とされてしまうことが往々にしてある。事前に主張整理することは非常に大事なので、裁判所がそういう姿勢を見せたことは評価したいし、かつ、主張レベルでなく、証拠まで整理してくれというのは、より積極的な姿勢なのである。

 今後、関電側と住民側の主張の補充を行なう。関電は、(1)今日の声明にもあった、地震動審査ガイドが改定されれば、主張補充したい、(2)もう一つは、住民側が関電の一番の弱点と考えている、震源近傍敷地問題である。

 すなわち、震源のすぐ近く原発の敷地は特別の考慮をすべきと規制基準にあるが、関電はそれをしていない。この点は名古屋の裁判(老朽高浜美浜原発設置変更許可処分取消訴訟)でも争点となっており、関電は国からの反論が出てきたら、この裁判でも主張したいと述べたが、いつ名古屋の裁判で国からの書面が出てくるのか、わからない。国の反論が遅れれば出せないことになる。関電自身の主張はこれ以上ないのである。──

 井戸弁護士は、この裁判の最も有力な争点はこの震源近傍の敷地問題であるが、もしこれで勝てば、規制委はまた規制基準を変えるかもしれないとコメントした。

 また大河陽子弁護士は、避難計画について、どのような事故を想定しているかという求釈明に対しては、関電は事故想定は把握していない、被ばく評価は行なっていない、それは、地方公共団体が想定するものだとして、事業者も協力項目が定められているが、事故想定を把握しないまま手伝うスタンスであり、反論したいと述べた。

 河合弘之弁護士は「裁判長は自分で書くことを決心している。再稼働する前に仮処分を出さないとだめという我々の意向はよくわかっている、けっこういいんじゃないという感触だ」と述べた。

 次回審尋期日は5月23日15時半、次々回は7月4日14時を予定している。

(脱原発弁護団全国連絡会)

fp1100pcgateway2000 at 10:00コメント(0) 

2022年03月22日

初の「原発バックフィット制度」めぐる判決 名古屋地裁、高浜原発停止認めず 中野宏典 2022年3月22日

初の「原発バックフィット制度」めぐる判決 名古屋地裁、高浜原発停止認めず 中野宏典 2022年3月22日

 関西電力高浜原発(福井県)の3・4号機について、火山噴火による影響が関西電力の当初の想定を上回ることが判明したのを受け、地元住民らが国を訴えた訴訟で、名古屋地裁(日置朋弘裁判長)は3月10日、原告の訴えを退け運転停止を認めない判決を下した。

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3月10日、名古屋地裁前で判決後に結果を伝える原告ら。(提供/脱原発弁護団全国連絡会)

 この訴訟は福島第一原発事故の教訓として、原発の安全に関して電力会社に最新の知見を踏まえた対策を求めた「バックフィット制度」についての初めてのケースだ。同制度の立法趣旨を踏まえ、原子力規制委員会に対し、基準不適合な原発の停止命令を義務付けるか否かが争点になっていた。

 だが判決は義務付けの要件である「重大な損害を生じるおそれ」を認め、安全に欠ける現実的な可能性が高浜原発にあることを認めながら、使用停止を命じなかった規制委の判断に裁量の逸脱や濫用はないと判断した。また、自然災害について約2倍の過小評価があるとしても原則として使用停止を命じるべきとはいえず、噴火(約180キロ離れた鳥取県の大山)についても、その蓋然性などを原告側が立証すべきとした。

 しかし、今年1月のトンガ噴火の例でも明らかなように、噴火の蓋然性など立証不可能だ。また、この裁判では規制委が事業者に有利になる方針を秘密裏に決めていたことも問題とされたが、判決は規制委の更田豊志委員長が「事業者の原発訴訟等における敗訴リスクを考慮していなかったとは言い難い」と認定しつつ、裁量の逸脱・濫用はないとした。明らかな他事考慮にもかかわらず、これを無視した頑迷さには言葉を失う。

 規制委の裁量を広汎に認めて司法の職責を放棄し、基準に適合していなくても原発停止の必要はないとの悪しき前例を容認した恥ずべき判断というほかない。福島事故の教訓は名ばかりのものとなり、新たな安全神話が復活したことに強い危惧を感じずにいられない。

(中野宏典・弁護士、2022年3月18日号)

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2022年02月10日

名古屋バックフィット訴訟が結審 3月10日に判決 2022年2月10日

名古屋バックフィット訴訟が結審 3月10日に判決 2022年2月10日

 2021年12月8日、名古屋地裁で、いわゆるバックフィット訴訟が結審を迎えた。本件は、福島第一原発事故後に導入されたバックフィット制度に基づき、大山生竹テフラの噴出規模が2倍以上になるという知見の変更があったのだから、その噴出に対する原発の安全確認の諸手続きが完了するまで高浜原発3、4号機の使用停止命令を命ずることを求めた訴訟だ。判決は3月10日に言い渡される。

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マスクを外して集合写真を撮る原告、弁護団。(提供/バックフィット弁護団)

 この知見の変更は、原子力規制委員会においてなされ、それに基づき関西電力に評価の見直しを提出させて事態を収束させることが密かに画策されていたが、関西電力が評価の見直しは不要という態度をとったので、原子力規制委員会は、新知見を基にして基本設計ないし基本的設計方針を変更し、設置変更許可申請をすることという命令を発出した。

 この噴出規模に関する知見は実は新知見ではなく、福島第一原発事故後の設置変更許可申請時に存在した知見であるので、当該設置変更許可を取り消して一から手続きをやり直すのが筋であるが、知見の変更があったことを前提に原子炉等規制法第43条の3の23第1項の規定に基づきバックフィット命令として発出された。ただし同条項は、使用停止命令等が規定されているだけで、このような内容の命令は同条項のどれにも該当しない不可解な命令だった。

 訴訟提起の段階では、上記申請に対する設置変更許可処分が出されていなかったが、訴訟中に許可処分が出され、その後なんらバックフィット命令が出されることなく、詳細設計や保安規定の検討が何となくなされている状態であった。訴訟進行が遅れると、それらの手続が終了し、訴えの利益なしとされかねないので、主張立証を集中的に行なうことを求め、裁判所もその方向の訴訟進行を行ない、早期結審に至った。

 結審にあたり、争点に関する主張を代理人が順次行なった。

 福島第一原発事故の実態を見れば、義務付けを認めるために必要な「重大な損害」の要件を満たしていることは明らかである。

 バックフィットはバックチェックを否定して導入された制度であり、新基準に適合しない原発の運転は許さない制度である。

 炉規法第43条の3の23第1項は、設置許可基準、技術上の基準、保安のため必要な措置を満たすことを義務付け、この三つの事項に違反していると認めるときは、原発の使用の停止等の保安のために必要な措置を命ずることができる旨規定しているが、高浜3、4号機は、技術上の基準、保安のために必要な措置に関し明らかに違反している。噴出規模が2倍以上になったのであるから、火山灰濃度の知見も変更になり、それは設置許可基準の問題であるにもかかわらずそれに関する変更許可はなされていないから設置許可基準にも違反している。

 そして、段階的規制は順次安全を確認する制度であり、基本設計ないし基本的設計方針の審査のみでは原発を運転することはできず、さらに工事計画認可、保安規定変更認可等の複数の規制を段階的に経なければならないが、その段階的規制が完了していない。

 さらに、段階的規制だけでなく、新たに自然現象の脅威に関する規制が強化されて導入された火山の影響の評価を完了するまで原発の運転は許されない。火山ガイドに規定された降下火砕物の原発に対する直接的影響の確認事項として、降下火砕物堆積荷重に対する機器等の健全性の維持、安全上重要な設備が閉塞等により機能を喪失しないこと等もいまだ確認されていない。

 安全が確認されるまで動かすなという判決を期待している。

(青木秀樹・バックフィット訴訟弁護団長、弁護士 2021年12月24日号)



fp1100pcgateway2000 at 17:49コメント(0) 

2022年01月09日

ウランにプルトニウム混ぜた「MOX燃料」英仏で再処理。フランス9月出発、11月日本到着 2022/01/09

ウランにプルトニウム混ぜた「MOX燃料」英仏で再処理。フランス9月出発、11月日本到着 2022/01/09

 関西電力・高浜原発(福井県)で使用する燃料がフランスを9月3日に出発した。ウランにプルトニウムを混ぜた燃料でMOX燃料と呼ばれるものだ。これを原発で使用することを「プルサーマル」と呼んでいる。

輸送の危険性、核武装の懸念
輸送ルート沿いの国が反対


 武装警官が乗船した2艘の船で相互に護衛しながらの輸送だ。奪取を防ぐため、どちらの船に燃料が積み込まれているかは秘密になっている。また、輸送ルートは喜望峰(南アフリカ)を経由したあとオーストラリアの南を通過して北上する(下図)。不安定な海峡は通らない。ざっと地球の3分の2ほども回る大航海だ。予定では11月下旬に日本に到着する。

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 核燃料サイクルを政策としていた日本は、1980年代に英仏に原発の使用済み核燃料の再処理を委託した。両国での再処理はすでに終わっていて、分離されたもの(プルトニウム、回収したウラン、放射性廃棄物など)はすべて日本へ返還されることになっている。このうち、高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)は、フランスからの輸送が終わり、今は英国からの返還が進んでいる。しかし、回収ウランや低レベル放射性廃棄物は手つかずの状態だ。
 プルトニウムは、海外でMOX燃料に加工してから日本へと運ぶ。1993年1月にフランスから高速増殖原型炉「もんじゅ」の燃料用に粉末状態のプルトニウムが到着したが、この時、輸送ルート沿いの国々の多くがその危険性や日本の核武装の懸念などから反対を表明し、あるいは領海内の通過を拒否する声明を出した。これを受けて日本は海外でプルサーマル用の燃料に加工して輸送する方針に変更した。

新潟、住民投票で装荷拒否
長期保存で燃料として機能せず


 最初の輸送は1999年に行なわれたが、英国で製造した関電用の燃料の品質検査不良が明らかになり、英国に返還された。同じ船で運ばれた東電用の燃料は別会社の製造だったが、地元が納得せず、装荷されずに貯蔵されることになった。この燃料が福島第一原発3号機に装荷されたのは11年後の2010年12月。この数ヵ月後には原発事故でメルトダウンした。
 翌年には東電・柏崎刈羽原発(新潟県)に燃料が運ばれたが、こちらは東電のトラブル隠しが発覚し、さらに住民投票で拒否、福島原発事故も重なり、貯蔵されたまま現在に至る。
 中電・浜岡原発(静岡県)も再稼働の見通しがなく、09年に輸送されたプルサーマル燃料は貯蔵されたままだ。柏崎や浜岡の燃料は長く貯蔵しすぎ、もはや燃料としては機能しないだろう。
 日本は海外に37tのプルトニウムを保有している(20年末)。20年12月17日には電気事業連合会が「2030年までに12基でプルサーマルの実施を目指す」計画を発表した。しかし、現在までにプルサーマルを実施できている原発は九電・玄海3号機(佐賀県)、四電・伊方3号機(愛媛県)、高浜3、4号機の4基である。この他にプルサーマルの地元了解を得ている未稼働原発は5基のみだから、12基計画は実現しそうにない。
 プルサーマルの使用済み燃料の後始末はウラン燃料のそれよりもいっそう厄介で、これを考えると、プルトニウムは燃料とせずにそのまま廃棄物として処理・処分すべきだと筆者は考えている。

(伴 英幸)

(2021年12月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 420号より)

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